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ヒロインになった日

ファンタジーの世界へ  私にとって、日本の外の世界はファンタジーでした。不思議の国のアリス、長くつ下のピッピ、アルプスの少女ハイジ、赤毛のアン……数えきれないほどの物語を読んで育った私は、いつも海外での生活に想いを馳せ、いつか日本を出るその時をずっと夢見ていました。憧れの世界へ行ったなら、私も物語のヒロインのようになれるかもしれない。ううん、きっとそうなれる! 例えば『大きな森の小さな家』の、ローラのような私。朝、ツリーハウスに届くお日さまの光で目を覚まして、小川でそっと顔を洗って、小鳥たちに挨拶。野イチゴを摘んで、裸足でダンスを踊って、星を数えながら眠るの……。でも、『あしながおじさん』のジュディのような私もいいなぁ。全寮制の大学に入って、毎日たくさん勉強するの。お休みの日は仲間たちと街へアイスクリームを食べに行ったり、クリスマスにはパーティに誘ってもらったり……。 どれもこれも、別に日本にいたってできることじゃないか!と思われる方も多いと思いますが、私にとってはまるっきり違う、夢の世界の話でした。そんな私が英語を学ぶことに喜びを感じ、早く日本を出たい、世界を見たいと願ったのは、ごく自然な流れだったのです。 英語に特化した高校を卒業した私は、大学二年生になったら必ず留学しようと決めていました。しかし夢見がちな性格にも関わらず、「初めての海外で留学」は、現実的に考えてどうなのだろうか?と思い、留学前の大学一年生の夏休みに英語圏へ旅に出ることを決意したのです。十八歳、生まれて初めて、憧れの海外へ。しかもその目的は「今の自分の英語力がどの程度なのか知りたい」というなかなかシビアなものだったので、もちろん一人旅でした。両親を説得し、アルバイトで貯めたお金で航空券を買い、ホテルを予約し、VISAを取り、……今思い返すと、その時の自分のアグレッシブさには驚かされます。「いよいよ、海外へ行くのだ」という喜びや、「十八歳にもなったのに一度も日本から出たことがない」という焦り、そして「今まで学んだ英語でどの程度生活できるのだろう」という挑戦的な思いなどが、私の心をモヤモヤと取り巻いていました。しかし不安は全くなく、近づいてくるその出発の日を思って武者震いするような心構えでした。行先はアメリカ、ボストンです。 英語圏ならば国や場所はどこでも構わないと思っていた私に、父の友人がボストン